せちやん 星を聴く人

川端裕人さんの「せちやん 星を聴く人」、文庫版が発売されたのでさっそく購入。

小学生のころ反射式の望遠鏡を親にねだって買ってもらった。親になにかをねだるということをほとんどしなかった子どもだったので、たまにねだられたのがうれしかったのか、あるいは、勉強に役立つと思ったのか、わりとあっさり買ってもらえたように思う。「天文ガイド」なんかも読んじゃったりなんかして、いろいろ知識も貯まってくると、経緯台じゃなくて赤道儀がいいなぁ(モーター付きであればもっといい)とか、カメラをつなぐアダプタが欲しいとか、いろいろ不満とか欲求も高まってくる。けれど、もともと天文に関心があったわけではない親としては天体望遠鏡を与えた以上になにかをしてくれるわけもない。もちろんそれだけでも十分以上なことをやってくれているのは分かるので、結局なにも言えなくて、ちょっぴり悲しくなったりもした。

まぁ、それでもそれなりには天体観測を楽しんでいたわけで、土星の輪っかなんか見たときには、自分の望遠鏡でそれが見えるいことがすごく嬉しかったり、なんとか工夫して写真をとってみたり、いろいろやっていたことをこの本を手にして思い出した。

川端さんの作品は、未来に向かう最先端と現在とノスタルジーの混ぜ具合というか重なり具合というかが、(自分にとっては)見事にバランスしていて、読んでいてとても心地良い。