自閉症の子を持って

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武部隆さんの「自閉症の子を持って」。店舗事務所に積ん読になっていたのが発掘されたので。

経過がうちの場合と非常によく似ていて、共感できる。比較的軽度の自閉症児の場合について、たくさんの人の参考にはなると思う。

ただ、寮育施設にしても、専門医にしても、重度から軽度まで自閉者(というか恐らくは障害者全般)のケアに必要なリソースが需要に対して圧倒的に不足しているのは事実なので、この著者は比較的恵まれている方であることに留意は必要かもしれない。うちの場合も親の会や、寮育に協力してくれる人々(や会社)や幼稚園・小学校、実家が経済的な余裕などのたくさんラッキーな面があって今の娘がある。足りないところを補うには今の福祉はかなり力不足。特別支援教育に関して法律が改正されても教育現場には金も人も理解も足りないのが現実。なんとかならないものかとも思うが……。

それはともかく。うちも普通学級にこだわっていて(入学半年くらい前からいろいろかけずりまわった)、娘も今いろいろ不自由はあるけれど元気に小学校に通っている。特別支援学級や特別支援教室を否定するつもりはないけれど、それらは(著者の言うように)やっぱりどんづまりで、つまりそこに入ってしまえばもう普通の社会への参加の道が閉ざされてしまうように感じる。一般社会とは別の障害者社会とでもいうべきものへの一方通行の入口のように思えてしまう。人も金もない状態でよくやっているのだろうけれどやっぱり不十分。このあたりは当事者(障害を持っている人)の状態にもよるのでかなり意見は分かれるのだろうけど、そういう不安を持つ人も多いと思う。

筆者は現役の記者なのでそういう読み方をしてしまうとちょっと肩すかしを食らうので、あくまで一人の父親の体験だと思ったほうがいいとは思う。個人的には小学校に入学してからの経過も読んでみたいと思う。