スイス時計の謎

やっとの事で読了した有栖川有栖さんの「スイス時計の謎」。特に表題作がいかにも本格で堪能できた。

太田忠司さんが解説で、こんなことを書かれている。

ああ、と僕は思った。ここに本格ミステリが書かれる理由がある、と思ったからだ。
自分自身では如何ともしがたい事態、とうてい容認できない不条理に押し潰されそうになったとき、「ロジックが世界を支配する本格ミステリ」の世界に飛び込むことで一時の平安を得ることができる。論理が勝利する物語に浸ることで、一瞬でも疲弊した心を癒すことができるのだ。
それを人は逃避と呼ぶかもしれない。しかし、この一時、この一瞬が、壊れかけた魂を救うことだってある。
本格ミステリは、そう、人の魂を救うことができるのだ。

これって、本格ミステリに限った話じゃない。自分が、ポール・グレイアムの正論に(全面的に首肯できなくても)癒しを感じたり、使うあてもないプログラミング言語の学習に時間を割いてしまったり、(仕事でない)デバッグに血道を上げたりすることも同じなんだなぁっと。こうやって、はっきり言葉にされて再認識した次第。

スイス時計の謎
スイス時計の謎
posted with amazlet on 06.06.04
有栖川 有栖
講談社 (2006/05/16)